road to nagoya 激闘の真夜中

5月に控えている名古屋遠征をより良くするために、リハビリも兼ねて渋谷の街に繰り出した。

まず今宵の目標の設定だ。それは完全に結果にコミットすること。渋谷で結果を出し、名古屋への自信とする。そのためならあらゆる手段を択ばない鬼にでもなるスタンスだ。

今宵の相棒はジュンヤ。実の弟ということもあり、意思の疎通はもちろん、アドリブにも対応できる能力とカリスマ性も備わっている。

俺は渋谷駅新南口のビジネスホテルを予約して自分にプレッシャーをかける。言い訳のできないこの絶対的な状況は気持ちの良さすら感じる。ホテルで身支度を済ませ、数時間後のここで女性と一夜を共にするイメージを行い、町に繰り出した。

ジュンヤと合流。固い握手をしてクラブに向かう。

クラブに向かう途中、イケてる男女とすれ違う。俺は完全にビビっていた。それもそのはずだ。今まで生ぬるい環境に身を潜めて過ごしてきた自分に付けが回っている。鳴りやまない鼓動と、期待を寄せてクラブに侵入。

さあ、ゲームの始まりだ

 

クラブに入ってロッカーに荷物を入れるときにすぐ近くに女性がいた。声をかけないと。瞬間的に感じたが3秒が過ぎて地蔵してしまった。

声をかけると決めてから3秒以内に声をかけることがベストだと言われているがそれよりも、断られることの恐怖が勝ってしまった。悔しがった。自分を責めた。必要以上に責めて同じ過ちを犯さないためだ。

今宵はあまりお酒の力に頼らないと決めていたのでレッドブルを飲み干す。知り合いの男がいたので少し挨拶。それから少し様子見をした。祝日前だからか12時なのに賑やかだ。最高の環境だ。

しばらく様子見。だがこの時クラブの異変に気付いた俺はあることを思いついた

 

今日は早期勝負だ。

しかし、眺めているだけで一歩がでない。ジュンヤもノンアルのため大人しい。こーゆう時はもう一度自戒する。断られて当たり前、何のためにここにいるのか?

自分にしびれを切らした俺はついに動き出す。隣にいた3人組に声をかける。いや、気付いたときには声をかけていた。

 

おめでとう!

なにが!?

今日卒業式じゃないの?

えー違うよ(笑)

 

オープンしたアパレル風の3人組だ一人余るのがややこしいが和のフェーズに入った。

社会人だったんだ。俺も社会人だよ。共通点だね。

確かに(笑)

家にテレビある?

あるよ

まじで言ってんの?俺もテレビあるんだけど。共通点だね

(笑)

ルーティン「強制共通点」で笑顔とスキンシップを導くことに成功。悪くない感触だ。

ジュンヤの和が聞こえてきた

え!?俺の家も洗濯機あるよ、共通点じゃん!

まずい。同じルーティンを駆使していた。女性が怪しみだす。

俺たち兄弟だからさ

しかし、まったく顔が似ていない俺たちを兄弟だとは思わず、ネタ扱いしてくる。

しまいにはお酒をたかられる。ごめんね。君たちと過ごしていても未来が全く見えない。放流

 

だが最初のナンパを終えて何か重たいものから解き放たれた俺は先ほどまでの悩みが嘘のように生まれ変わる

 

ジュンヤのダンスが下手くそだから教えてあげてよと声をかける。反応はあまりよくない。久しぶりのこの感触。最高だ

楽しくなってきた俺は心だけじゃなく、体も温めるために踊り狂う。クラブはダンスがあっての場所だ。

ジュンヤがソロ案件にいったのでトイレ休憩。そこで先ほどの知り合いにあった。名をスーツ男としよう。彼は地蔵なんて全くせず、ガンガン声をかけている。スーツ男がいきなり二人組にアタックし、急遽4人で乾杯することに。女二人は明らかに食いついてなく、お酒のためについてきてるのがすぐにわかる。スーツ男は状況を把握できない野生なのでこの後未来がないことに気付いていない。俺より年上だし仕方なくバーカンについていく。すると、スーツ男は俺に向かって衝撃的な言葉を吐く。

 

おい、4人分のお酒を奢れ

 

何を言ってるんだこいつは。友達でもなければ女に未来があるわけでもない。それにそのナメた態度。うまく言い逃れて割り勘にさせて4人で乾杯した。せっかくなので担当の案件と和む。ギャラ呑みが好きな高飛車ギャル。DJに呼ばれてきたようだ。あきらかに私は周りとはレベルが違うのよと醸し出す相手に言いなりに褒めるの禁物。彼女から放たれる自慢話を横流しにし、ネグを放つ。

 

そうなんだ。25歳かと思ってた

ひどーい

いきなり歌を歌ったり主導権を略奪できた。バンゲ。だがスーツ男が全く相手にされていない。

お前の友達さ、俺の先輩に全く興味持ってないじゃん

最初に言われた、その帽子、小顔効果でしょ?って言われたのでイラついてるみたい

ネグと貶しは紙一重だ。彼女たちは逃げて行った。スーツ男が必死に止めていたが加勢する気はなく黙って眺めていた。スーツ男ともお別れし、再びジュンヤとフロアでコンビ。

そこに一人でふらついている女性が近くにいた。俺は彼女を見つめると、彼女は微笑みつきで見つめ返してくる。手招きをするとこちらに来る。

 

完全な即系だ。会話をする前から食いつき信号のIOIを2つ確認できる。

ジュンヤと正3で和む。

友達とはぐれちゃったー

ほのかなアルコールと共に自らを即系と打ち明けるような雰囲気。

顔は可愛くもないし、ブスでもない。完全な量産型の即系だ。ジュンヤがソロに行ったので再び和む。

 

仕事はなにしてるの?

保育士だよー、なにしてるの?

お酒何呑む?

なんでもいいよー

特にルーティンに拘ることなくなくありふれた会話。即系にスペシャリティは必要ない。魔法から解かないことだけを意識。

踊りたいー

彼女の名前をリエとしよう。リエは俺に手を取られながらダンスフロアへ導かれる。

音と異空間を最大限利用して最大のスキンシップを図るが全てノーグダ。 10分くらいお互い汗をかいた。

疲れたから向こうで休もう

一度静かな所へ連れ出す。

即系はモタモタしていると沸点を過ぎてしまう。ピークがあるとするならば今だ!

 

まだ呑み足りないねー

そうだね

疲れたし外に呑みに行こうよ

ストレートに打診。

あ、そーゆう感じ?笑

そう。人すごいし疲れちゃうやん。

んー。良いんだけど、友達とロッカー一緒だし、友達に一言だけ言わないと、、

そうだね。でも友達今男の人といると思うよ?そこに俺らが入って邪魔になりそうじゃない?

あー、、確かに笑

 

でも友達心配だし、一言だけ言いたい!

ここで粘っても良いけどこんな即系相手にそこまでするのか?という冷静な自分が勝りリエを放流。 ここに戻ってくれば連れ出せる。それに賭けた。

 

数分経っても戻ってこない。正気になって消えたかな。なんて思った矢先、リエがコートを着て、こっちに向かってくるのであった。その顔は覚悟を決めた。とは言い難く、合流した友達と何やら作戦会議をしていた。

俺は近寄り、友達に告げる。

リエを少し借りてもいいかな?

いいよ! 行ってきなよ!

友達にはハーフの海上保安官のイケメンがついていたので彼女達も2人になりたかったんだろう。 

納得がいかない様子なのはリエだった。

友達が心配。この場に及んでまだ正統派な女性を演じるリアにはもう一工夫必要だった。

今まだ2時だよ。 俺は君と2人で少しお酒を呑みたいだけで何も朝まで一緒にいろなんて言ってない。友達の元に必ず返すし、つまらなかったら自分から出ていけばいい。 

上手いこと言うね笑

全く。即系には二種類いて、全てがノーグダの即系と全てが形式グダの即系。 後者は貴方は悪くない。貴方はチャラくない。悪いのは男達だよねっていう付箋を貼ってあげる必要がある。

 

2時。連れ出し。TKを出る。クラブに入って僅か2時間で連れ出せたのは大きい。

歩きながら俺について質問攻めをしてくる。それもそのはず。貴方はこらから一夜を探そうとしている男の情報を何も知らないからね。

特に詳しくは、話さず歩みを続ける。

 

どこに呑みに行くの?

そうだね。寒いし、芋けんぴ食べたいからコンビニで買って俺の家で呑もう。

そーゆう感じ? てか家渋谷なの?

今日はね。 ホテルを渋谷に取ってるんだ。

でも私、絶対やらないからね!? そーゆうのまじで嫌い! ほんとありえないし絶対やらないから!

形式グダ系の女だとは分かってはいたけど、久しぶりに戦に出た俺の神経は鈍っていて、臆病になり不安になる。 

何もしないよ。逆に俺のこと襲わないでよね。きょうは男の子の日だから

(笑)絶対こーゆうの慣れてるでしょ?

何も経験していない童貞のほうがタイプだった?

 

この変のグダ崩しや形式グダの運び方、女性を悪者にしないトークは久しぶりだ。

即れるか、即れないか、どっちにも転がりそうな状況が醍醐味と言ってもいいだろう

 

俺たちはホテルに向かって歩みを止めない。りえに考える時間を与えず即れる環境に素早く運ぶ。ルーティンマシンガントーク

 

と、その時。

りえのスマホに着信が来た。そうナンパ男にとってはまるで悪夢な。魔法を溶かす着信が。

名古屋で中村アンを即ったときは、この解毒剤を飲ませなかった。しかし、りえはあの時みたいに俺に魅了されていない。彼女はすぐに電話にでる。

 

もしもし!今どこ? 私? 今なんか歩いてきちゃったよー

え?クラブ出るの? さっきの男の子といるの?それなら私もそっちいくよー。

え、なんでよ! 今から戻るから待ってて。どっちにしろ一回話そうよ

 

りえは魔法から目覚め、正気に戻った。俺は耳に神経を集中させ、電話の内容を自分なりに解析した。

 

りえは一度友達と会いたい、とにかく一度会いたい。

友達は俺たちを二人にしようとしてる。

 

厳しかなと思ったが、どっちにしろ一回話そうよのフレーズが引っかかるのと、りえを友達にさえ会せれば即れるチャンスは十分にある。

俺たちは方向展開し、クラブに向けて歩き出す。

 

ごめんね

なんで謝るんだよ。気にしないで

だって、、

俺がりえの立場だとしても、友達に会いたくなるよ。

めっちゃいい人だね

今更?

今更(笑)

心なしか食いつきが上っがている気がした。理由はシンプルで友達に会えるからだ。りえは俺と一夜を過ごす気もあるが、友達と会ってからじゃないと過ごさないようだ。だから俺はあえてスタンスを変える

 

クラブの前まで送ってあげるからね。あ、そのあとはどっか敵等にふらつくから安心して友達と呑みにいってきな。むしろ短時間だけどすごしてくれてありがとう!

俺から放たれる予想外の言葉に動揺と寂しさを隠しきれない様子のりえ。彼女は友達と会った後、俺に抱かれる予定なのに急に今宵の相方が私に興味を持たなくなった。

ルーティン。猫に糸。

 

別に帰らなくてもいいんじゃない?

ここまでうまくいくとは思わなった。しかし、ナンパはリアル。油断は禁物。

 

再びクラブの前に到着。友達を待つ。

しかし、中々到着しない。

放尿を我慢できない俺たち。

 

そうだ、この間に居酒屋に連れ出して仕上げておけば時間短縮で早く寝れる。

近くの居酒屋で待ってようよ。

そうだね、飲みたい

 

磯丸水産IN

生ビールで乾杯。

怒涛の質問攻めに遭う。 

 

今宵の男はワンナイトに相応しいのか女性が本能的に見定めるくそテストという行為だ。

あらゆる質問を適当に答え、お互いビールが進む。少しだけ食いつきを上げるトーク

りえって笑った時の顔いいよね。

なに、いきまり

なんか思った。ずっと笑っててよ、笑顔フェチなんだよね

なにそれ(笑)

少しの愛想笑いと、彼女の真ん中から溢れる照れ笑い。

りえは仕上がった。

 

そこに遅れて友達子と海上保安官君が登場。りえはどんなお褒めの言葉よりもテンションを上げて友達子のもとへ。俺と、海猿君は女子たちの今宵の答え合わせと、反省会の確認待ちだ。どうにでもなってもいいようなスタンスでいたが、りえはこちらに戻ってきた。その顔はどこか強固な覚悟を決めた女の顔にもみえた。

 

友達子は海猿と消えた。楽しむために集まった友人は二人たちは、それぞれのペアと一夜を共にするために、ハムより薄い女の友情を跡形もなくさらけ出し、自己の承認欲求と性欲を開放させるのだ。ならばお望み道りその期待に全力で答えてあげよう。

 

俺たちはハイボールをお代わりし、アルコールを更に取り入れた。

これが後に悪展開を巻き起こす。

 

居酒屋を後にした俺たちはすぐさまタクシーに乗り込んだ。りえが泥水模様になっている為、一刻も早くにホテルに向かう必要があった。俺は車内で眠りかけているりえに反応をとらせるために随所に話しかけた。その光景はまるで生死をさまよう人の安否を確認するのと同じだ

 

ホテルの前に到着し、まずはコンビニでゴムを買う。坊主の可能性もあったのでギリギリまで出費を抑えていた。

 

部屋にIN

 

つい何時間前に一人でいた部屋。そこで掲げた目標が今まさに達成されようとしていた。あともう少しだ。

 

りえは部屋に入るとすぐにベットに座る。終始グダを起こす女は大抵ベッドにいきなり座らない。

 

気持ち悪いー

大丈夫? 水飲む?

ありがとー

 

先程よりも泥酔している模様が感じ取れた。まずい、このままだとギラつくタイミングを無くして寝られる。

 

そんな事を思っている矢先に、りえは横たわり、深い眠りについて帰らぬ人となった。

 

大丈夫?

起きてる?

 

俺の応答に対して、念仏のようなうなり声しか返せないりえはもはや死人同様だった。

 

俺はりえに抱きつくも、ただただ、りえの気持ちの良さそうな呼吸と呼吸による上下運動の肺の膨らみを眺めるだけでなすすべがなかった

 

負けた

 

後少しの状況で結果が出なかった。

悔しさよりも、疲労感と達成感にあふれ、狭い空間の中で女が寝て男が起きる異空間でただぼんやりとテレビを眺めていた。

ここまでこれて良いイメージは作れた。

 

そんな事を思っていると、気がついたら俺も眠りについていた。

 

 

 

 

早朝、ふとテレビの音で目を覚ます。川島海荷が毎朝お馴染みのZIPポーズをとっていた。

 

俺は寝てしまったのか 次第に意識がはっきりとして昨日のストーリーを思い出した。

 

そうか、俺は負けたのか

 

隣を見ると、ベッドの大半を占領して気持ちよさそうに寝ているりえがいた。

一瞬だれだ?と思ったが自らがピックアップして自ら連れ出した女だと脳内で徐々に理解。

 

おはよー

 

朝の挨拶をすると、ムニャムニャ言いながら見てる夢から解放され起き出すりえ。

握る手がカサカサ。一瞬開く目が化け物、微笑みながら探す俺の腕。

 

おはよ、私寝ちゃった?

気持ちよさそうに寝てたよ

えーごめーん。私なんにもしてないよね?

あんなことや、こんなことしちゃたよ

えー絶対してない、えーわかんない

俺のことは覚えてる?朝おいてこいつ誰?みたいなのじゃない?

大丈夫、ちゃんと覚えてるよ。郁人くん

 

りえは心なしか食いつきを下げて無く、むしろ上がっているのでは?というくらいの勢い。朝7時の寝起きのテンションではない。

 

そういえばこんな言葉を聞いたのを思い出した。

 

女は朝、エロくなる

 

俺はその言葉と、りえの勢いに負けてもう一度ベッドに導かれる。

 

後ろからこうやって抱きしめられるの好きなのー

 

俺の手を誘導して自分の体に触れさせるりえ。

俺はこのときようやく違和感の正体に気づいた。

 

ねえ、こっちむいて?

 

 

 

 

テレビから川島海荷桝太一が朝の情報を伝える。そのBGMを背景に俺たちは交わった。お互い朝なのに出来る限り求め合った。

そこには形式も含め、いっさいののグダがなっかった。 

 

試合はまだ終わっていなかった。

 

服を着ながら、たわいもない話をする二人。つい数分前男女の関係になったとは思えないほどお互いドライだった。

 

じゃ、そろそろ行くね

 

普段俺が良く使うこの言葉を女性に使われたのは久しぶりだ。

あまりに唐突すぐてたが動揺を隠すようにすぐさま会話を続けた。

 

わかった。駅まで送るよ。

大丈夫

まるでやり捨てをするチャラい男心をもったかのようなりえは俺の言葉を一つづつ丁寧に破壊していく。そこにはもう即系の雰囲気を醸し出す女性はいなかった

 

じゃ、またね

 うん、お疲れ様。

 

りえは寂しそうな表情も、楽しかった昨日を振り返る笑顔もなく、あったのは任務を全うしたかのような仕事人の顔だけだった。

 

もそかしたら俺は即ったのではなく、即られたのかもしれない。

そう考えてからは昨日から今日までのりえの行動や言動はプロフェッショナルにしか見えなくなった。

 

俺は一人部屋の中でベットに倒れ込んだ。喜びとも悲しみともいえない気持ちに包まれた。

結果は有言実行出来た。しかし、どっちが即ったのかわからない展開に混乱しながらも、少しの自信も身につけた。

 

即ろとしてる男もいれば、即ろうとしてる女もいる。即れるのは男にしか与えられた特権なんかじゃなく、男女平等に与えられていた。そんな原理原則を俺はどっかではわかっていながらも、男が、自分が即ったと、正当化しようとしていた。

 

確かにこれに関しては答えがなく、迷宮入りする永遠の難点だ。

大事なのは目標を決めて、その目標に対してトライして、結果はどうだったのかというプロセスだ。俺は目標の為ならプライドなんか平気で捨てるし、即ろうが即られようが結果がでれば。ノープロブレム

 

1即の手土産を元に名古屋へ挑戦する。

俺はまだまだもっと強くなれる。 ~Be Storong